こんにちは、のんです。
はじめに、2026年7月28日に発生した熊本の地震で被災された方に、心よりお見舞いを申し上げます。
この記事は、いま断水で困っている方がすぐ使えることを先に書いています。備えの話は後半にまとめました。必要なところだけ読んでいただければ大丈夫です。
災害でまず困るのは、水や食料よりもトイレだと言われます。水や食べ物は少しの間なら我慢できますが、トイレは待ってくれません。しかも真夏は、臭いと衛生という冬にはない問題が重なります。
建築士として配管の仕組みから見た注意点と、夫(消防士)が現場で見てきたことを合わせて、順番に解説します。
いま断水している方へ:まずこの3つだけ
難しいことは後回しで大丈夫です。まずはこれだけで、当面しのげます。
① トイレは流さずに待つ(理由は次の章で説明します)
② ポリ袋を便器にかぶせて簡易トイレにする(作り方は後述)
③ 使った袋は口を縛って、日の当たらない涼しい場所へ
なぜ「流してはいけない」と言われるのか
水道管が壊れているとき、排水管も無事とは限らない
断水の原因の多くは、地震による水道管の破損です。同じ揺れを受けている以上、排水管も傷んでいる可能性があります。
排水管が壊れていたり、途中で詰まっていたりする状態で水を流すと、流れきらなかった汚水が低いところへ戻ってくることがあります。
集合住宅で特に注意したい「逆流」
マンションやアパートは、上の階から下の階へ縦の配管(排水立て管)でつながっています。どこかで詰まると、下の階のトイレや浴室の排水口から汚水があふれることがあります。
自分の家では何も起きていないのに、下の階に被害が出る——これが集合住宅の難しいところです。過去の震災でも報告されている事例です。
ただし、これは「絶対に流してはいけない」という意味ではありません。建物や地域の状況によって判断が変わります。次の章で判断の仕方をまとめます。
流していいか、どう判断する?
確認する順番

確認が取れるまでは流さない
自治体や管理者から「下水道は使用可能」と案内が出ている場合は、指示に従って問題ありません。復旧状況は日々変わるので、最新の発表を確認してください。
判断がつかない間は、簡易トイレでしのぐのが安全です。
一戸建てで排水管の被害が確認されていない場合は、お風呂の残り湯などで流せることもあります。ただし少量の水では汚物が管の途中で止まってしまうため、流すなら一度にバケツ半分(5〜6L)をまとめて使うのが基本です。
簡易トイレの作り方(家にあるもので今すぐ)
市販の携帯トイレがなくても作れます。
用意するもの
- ポリ袋(45L以上)を2枚(ゴミ袋で大丈夫です)
- 吸水材(ペットシーツ・紙おむつ・新聞紙・猫砂・ボロ布など)
- 袋の口を縛るもの(結ぶだけでも構いません)
手順

袋を2枚使うのがポイントです。1枚目は便器を汚さないための「敷き」、2枚目が実際に使う「受け」。1枚目は繰り返し使えます。
吸水材はこれが使えます

便器が使えない場合は、バケツや段ボール箱に同じ要領で袋をかぶせれば代用できます。段ボールは座っても崩れないよう補強してください。
【真夏の断水】臭いと衛生をどう守るか
ここが、今の季節にいちばん大切な部分です。気温が高いと、臭いの出方も細菌の増え方も、冬とはまったく違います。
臭いを抑える3つの原則
① 空気を抜いて、すぐ縛る
臭いは空気と一緒に漏れます。使用後は袋の空気を押し出してから、口を2回ねじって固く縛る。
② 二重にする
縛った袋を、もう一枚の袋に入れて二重に。臭いの漏れ方が大きく変わります。
③ 涼しく、日の当たらない場所へ
直射日光の当たるベランダは、袋の中が高温になり、臭いも発酵も進みます。日陰で風通しのいい場所が原則です。
臭い対策に使えるもの
- 重曹・クエン酸:吸水材と一緒に入れると臭いが和らぎます
- 消臭剤入りの猫砂
- 新聞紙:袋と袋の間に挟むと湿気と臭いを吸います
- コーヒーかす・お茶がら:乾かして入れると消臭になります
保管場所の作り方
- フタ付きのバケツや衣装ケースがあれば理想的です
- なければ段ボール箱に大きなポリ袋を敷いて臨時の保管箱に
- 保管場所は生活スペースから離す(玄関の外・物置・風下など)
- 自治体からゴミ収集の案内が出たら、その指示に従って出してください
使用済みの袋は、収集が再開されるまで数日から数週間置くことになる場合があります。最初から二重にしておくことが、後々いちばん効きます。
手が洗えないときの感染症対策
断水中に怖いのが、感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)の広がりです。トイレのあとに手を洗えない環境は、感染が起きやすくなります。

アルコールは汚れの上からでは効きません。まず拭き取ってから使ってください。
家族に体調不良の方が出たときは、処理に使い捨て手袋とマスクを着け、処理後の物はすぐ二重の袋に密閉します。可能であればトイレの袋を分けると安心です。
どれくらい必要? 数の目安
トイレの回数は、一般に1人1日5回前後とされています。

大規模な災害では、断水が1週間以上続くことがあります。「4人家族なら140回分」が、現実的なひとつの目安です。
この数を見て「そんなに用意できない」と思われたかもしれません。市販の携帯トイレだけで揃える必要はありません。ポリ袋とペットシーツの組み合わせなら、ずっと安く数を確保できます。
家族に合わせた配慮
トイレの困りごとは、家族構成によってまったく違います。
小さなお子さんがいる家庭
- 音や臭いを怖がって我慢してしまうことがあります。我慢は便秘や膀胱炎につながります
- 「ここでしていいよ」と繰り返し声をかけてあげてください
- おむつが取れたばかりのお子さんは、一時的におむつに戻しても構いません
高齢の方・介護が必要な方
- しゃがむ姿勢が取れない方には、便座を使った形が必須です
- 夜間が不安な場合、居室の近くに簡易トイレを置く選択もあります
- 水分を控えてしまうのが最大の危険です。トイレを我慢するために飲む量を減らすと、脱水や熱中症につながります
女性の方
- 生理用品は、洗えないぶん多めに必要になります
- 使用済みの処理用に、中身の見えない袋があると安心です
持病のある方
- 人工肛門(ストーマ)の装具や導尿カテーテルなど、代わりの効かない用品は優先して確保を
- 支援が必要なときは、遠慮なく避難所の運営者や保健師に伝えてください
給水所へ行くときの注意
断水中は給水所に行くことになりますが、炎天下の行列は熱中症の危険があります。
- 朝夕の涼しい時間を狙う
- 帽子・日傘・飲み水を持って行く
- 水は重いです(10Lで10kg)。台車やキャリーカートがあると安全です
- ポリタンクがなければ、リュックにポリ袋を二重に敷く方法もあります
- 高齢の方だけで行かせず、可能なら誰かが付き添ってください
給水所の場所と時間は日々変わります。自治体の公式発表を確認してから出発してください。
断水中、水はこう使い分ける

お風呂の残り湯は流さずに貯めておく——これは今日からできる備えです。ただし小さなお子さんがいる家庭では、溺れる事故を防ぐため浴室の施錠を忘れずに。
食器はラップをかけて使うと、洗う水を節約できます。
停電でトイレが使えなくなることもあります
断水していなくても、停電でトイレが使えなくなることがあります。
- マンションの給水ポンプが止まると、水道が生きていても水が出ません
- タンクレストイレは電気で給排水を制御しているため、停電時は流せないことがあります(手動レバーがある機種もあるので、取扱説明書を確認してください)
- 温水洗浄便座も停電中は使えません
停電は断水とセットで起こることが多いので、どちらでも使える簡易トイレを用意しておくのが確実です。
水道が復旧したあとの注意
意外と知られていませんが、復旧直後の水はすぐに飲まないのが原則です。
- 最初は濁った水やサビが出ることがあります
- 透明になるまでしばらく流してから使ってください
- 濁りが取れない、異臭がするときは水道局に連絡を
- 給湯器や浄水器は、メーカーの案内に従って確認してください
落ち着いたら整えたい備え
ここから先は、いま切迫していない方向けの内容です。

置き場所は、トイレの近くにまとめて1箱がいちばん実用的です。取りに行けない場所に置いても意味がありません。
そして、一度だけ試しに組み立ててみてください。袋のかぶせ方、吸水材の量、臭いの感じ方——やってみると分かることがたくさんあります。
いま被災されている方へ
トイレの問題は、生活の尊厳に直結します。うまくいかなくて当たり前です。完璧にやろうとしなくて大丈夫です。
そして、我慢して水分を減らすことだけは避けてください。真夏の脱水は、熱中症や血栓症につながります。トイレの心配より、体を優先してください。
最新の給水・避難所・下水道の情報は、必ず自治体の公式発表をご確認ください。SNSでは古い情報や誤った情報が混ざることがあります。
- 熊本県「令和8年熊本地震に関する情報」:https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/1/274517.html
- お住まいの市町村の公式サイト・防災無線
- NHKなど公共放送の給水・避難所情報
体調に異変を感じたら、遠慮なく助けを求めてください。意識がはっきりしない・水が飲めない・急な息切れは、迷わず119番です。
まとめ
- 断水時は、下水が使えると確認できるまで流さない
- 判断は自治体や管理組合の発表を優先する
- ポリ袋2枚と吸水材で簡易トイレはすぐ作れる
- 真夏は空気を抜いて縛る・二重にする・日陰に置くが臭い対策の柱
- 手指衛生を徹底し、感染性胃腸炎を防ぐ
- 目安は1人1日5回。4人家族7日分で約140回分
- トイレを我慢して水分を控えない。脱水のほうが危険です
- 停電でもトイレは使えなくなる。ポンプやタンクレスに注意
- 復旧直後の水は、濁りが取れるまで流してから使う
トイレの備えは地味ですが、被災された方が口をそろえて「いちばん困った」とおっしゃるのがこの問題です。ポリ袋とペットシーツを少し多めに買っておく。それだけで、いざという時の安心感がまったく違います。
この記事が、どなたかの助けになれば幸いです。

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